2014年5月13日火曜日

筑波山 その3 ~登山と下山~

~つつじヶ丘-女体山頂~

つつじヶ丘から徒歩による登山に入る。二人共自転車の登りの負担が脚に来ていて、足取りが重い。
 
 つつじヶ丘からしばらくは、かなり人為の入ったエリアを通る。大学の植生の研究者である上條先生によると、江戸時代から草刈り場として利用されてきた場所らしい。もっとも、それは筑波山全体に言えることなのであるが。このエリアだけ比較的その様相が残っているのは、「つつじヶ丘」の名称の通りツツジを多く植えているためなのだろうか、それとも「風返峠」名前の言うように尾根筋で強風でも吹くのだろうか。

 しばらく歩くとようやく日差しが遮られ、木漏れ日が入るほどの植生となる。それでも、向かって左側はスギ林で、右側はコナラなどの雑木林でまだ若い森の様相がある。

 ここから少し行くと、アカガシの生える標高となる。アカガシは常緑広葉樹の仲間にしては珍しく、比較的標高の高い場所に生えている。この辺りから、冷温帯性の植生が増えてくる。

 登山道の中間地点、筑波山神社方面への道の分岐点の少し上には、台風で折れてしまった巨大な杉の切り株がある。これを少しでも輪切りにして、持っていければ、素晴らしいテーブルになるのにといつも思ってしまう。ちなみに、分岐点は休憩所となっていて、そこにはその杉を使ったベンチやテーブルが有る。

 ここで、すぐ近くから美しい鳥の鳴き声がした。どこにいるかと見回すと、k村が見つけてくれた。その鳥は登山道のすぐ脇、杉の丸太や枝が散乱する場所で鳴いていた。
ミソサザイ。この時望遠レンズを持って行かなかったことが悔やまれた。
杉の切り株 2013
後にわかったのだが、この鳥はミソサザイという鳥であった。翌日鳥好きの知人に伺って判明したのだが、その人はこの鳥を求めて軽井沢に行く予定だったらしい。いるところにはいるようなのだが、筑波山で見れるとは思ってもいなかったらしく「筑波山行き決定した。」と言っていた。

 登山道は尾根沿いに続く。ここ以降は岩場が多くなり、急に傾斜がきつくなる。これは筑波山を構成するはんれい岩がこの標高から地表に現れてくるためである。はんれい岩は花崗岩によりも硬く、削れにくい。同時に、筑波山を代表する奇岩群も現れてくる。
2013

2013
  
 そして、さらに標高が上がってブナ帯へと入る。ブナは筑波山を特徴付ける主要な種だ。ブナは日本の冷温帯を代表する樹木で、基本的には日本海側に分布している。これは冬季の多雪がブナの生育、特に後継樹の成長に大きく影響しているためで、太平洋側の関東平野では筑波山に生息地が点のように存在している。氷河期時代の生き残りが温暖化で上へ上へと追いやられた結果である。近年は温暖化の影響を大きく受けていると言われている。
新緑のブナ。慣れてくると樹形で判別できるようになる。

 個人的に、ブナは非常に好きな木だ。なぜかと言われてもよくわからないが、あの樹皮の模様と葉の形、色を気に入っているのかもしれない。しかし、筑波山のブナはよく見られるような、白の斑点が入った美しい樹皮をしているものは少ない。これは雪の少なさが原因なのか、大気の問題なのか、自分にはよくわからないが、筑波山におけるブナの大きな特徴だと思っている。


新潟県のブナ林通称「美人林」。名前の通り非常に美しいが、この森は相当人の手が入っている。

 この場所で再び鳥の鳴き声を聞いた。先ほど聞いたものとは違うが、とても美しい鳴き声だった。再び、その姿を登山道のすぐ脇に捉えることが出来た。
ソウシチョウ
最初はキビタキか?と思った。やはりこれも翌日に鳥好きの方に聞いて判明したのだが、ソウシチョウという鳥であった。これは日本の侵略的外来種ワースト100にも入っている外来種で、元々鳴き声が美しかったために中国から輸入されたものらしい。筑波山は主要な生息地になっているとのことであった。今回は、冬に何度も登った時より鳥をよく見れた気がする。

 そして、女体山頂へと着いた。途中からは二人共もはやあまり疲れを感じずスイスイと登っていた。山頂付近はシーズンということもあり、登山者で渋滞していた。筑波山は女体山と男体山からなり、祭神はイザナギとイザナミである。いつも女体山の方が眺望が良いためそちらに登ってしまっている。

 山頂には筑波山神社・女体山の本殿(中腹は分社?である)がある。ちなみに、二人共願いは
「良い出会いがありますように。」
だったようだ。真面目な話、筑波山は万葉の時代から男女の出会いの場である。

 山頂の岩の、いつも自分のお気に入りの場所で昼食を食べる。天気は快晴だが、少し靄がかかってしまっていた。条件が良ければ東京スカイツリー、新宿の高層ビル群、果ては東京湾まで見えるのだが、それをk村に見せることは出来なかった。このポイントは、270度ほどの大パノラマを楽しめ、柵などの障害物もなくとても気持ちがいい。
山頂から麓を望む


ゆーみんのひこうき雲を流したくなるような風景

2013 12月
2013 11月
ちなみに、他の日ではこんな感じである。すっぽりと雲に入ってしまって何も見えない時もある。


~女体山頂-帰宅~

 景色を堪能したところで、帰宅する。下りは驚くほど早い。

 再びソウシチョウに出会う。今度は真上で鳴いてくれた。

 つつじヶ丘から、帰りは八郷の「ゆりの郷」という温泉に向かうために石岡方面に向かう。60キロ以上を自転車で出したのは初めてだったが、とても楽しいものだった。相変わらずk村のテンションは高い。



 最後は、温泉に入って朝日トンネルを通って帰ってきた。帰ってきて、k村が
「大学生活でトップ10に入る楽しさだった。」
と言ってくれたのは、企画したこちらとしてもとても嬉しいものであったし、自分としても楽しかった。

 また機会があればこんな小旅行を楽しんでみたいものである。


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