筑波山に外来鳥であるソウシチョウが多く生息していることは、既に何回か記事に書いている。ソウシチョウは特定外来生物にも指定されており、日本の侵略的外来種ワースト100にも入っている。元々は中国原産の鳥で、姿形や鳴き声が美しいことからペットとして飼われ、逃げ出した個体や放鳥された個体が筑波山に住み着いたようだ。
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2014.5.14 女体山の尾根付近にて |
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2014.6.4 女体山頂付近にて |
一方で、その姿形や鳴き声の美しさから登山客には人気である。元々籠の鳥であったためか、警戒心が薄く登山道沿いにも度々姿を表し登山客の足を止めている。その人達がこの鳥を外来種であることを認識しているかどうかは分からないが、個人的に、この鳥が人の手によって放たれたものと知ってしまうとその美しさにも興ざめである。「万葉の時代の控えめな鳥の鳴き声とはかけ離れている」という人もいた。
さらにもう一種紹介したい外来種がいる。それは、女体山山頂でキアゲハが乱舞している中に突然現れた。
2014.6.14 女体山頂 |
そこで、やどけんのメンバーや牛久自然観察の森にて質問してみたところ、この蝶はアカボシゴマダラであるということがわかった。
同日。アカボシゴマダラ(夏型) タテハチョウ科に属し、日本では南西諸島を中心に見られる。近年関東にて大陸型の亜種の分布が確認されている。 |
同日。アカボシゴマダラ(夏型) |
確かに、この蝶は美しい。自分でも見ていてほれぼれとする美しさだ。しかし、そのような理由で本来生息しない生物を放したことによる影響について、その人はこれまでの歴史を振り返ったことがないのだろうか。人為的に持ち込まれた種によってどれほど生物多様性が失われてきたことだろう。このアカボシゴマダラも、植樹であるエノキを巡って、同じくエノキを植樹とするオオムラサキやゴマダラチョウと競合するものと考えられる。1995年に初めて埼玉県で確認されて以来、現在に至るまで関東全域に生息域を広めているところを見ると、その繁殖力の強さも伺える。
ソウシチョウとアカボシゴマダラについて共通して言えることは、どちらも「美しい」から放されたということだ。そして、美しいゆえにこれが外来種だから駆除すべき、あるいは広めるべきではないと言っても、世間ではあまり受け入れられないという問題もある。これらの生き物は見る人を楽しませているのだからいいではないか、ということである。似たような問題は、京都においてマスコットキャラクターと化したヌートリアや、北海道にて釣り客のためにニジマスを放流する団体など、全国に見ることができる。
人間が見るからには、その利用や経済的な側面、見た目から生き物がより好みされるのは仕方ないことだろう。誰だってゴキブリを保護しようだなど思わない。しかし、それを「自然」の領域で使ってしまってはそれを「自然」といえるのだろうか。
筑波山は全域が水郷筑波国定公園に指定されている。そして、これらの生き物が見られたのは原生的な自然を保護すべく設定されたはずの「特別保護地区」である。特別保護地区では一切の動植物の移動・採取が禁止されている。ある意味、この法律がソウシチョウとアカボシゴマダラの駆除を阻んでいるというのも皮肉なものである。
他方で、「外来種」と一方的に決めつけて攻撃する風潮もどうだろうかという意見もある。イネや殆どの野菜、家畜は元を正せば外来種であり、人為的でなくとも広がる外来種もいる。そのあたりと上手く付き合って自然と人間の領域を考えることが今後求められていくのだろう。
なお、参考資料として610氏から以下の資料を紹介していただいた。
茨城県坂東市におけるアカボシゴマダラ(チョウ目:タテハチョウ科) の羽化の記録
茨城県におけるアカボシゴマダラ (チョウ目: タテハチョウ科) の記録
追記:アカホシゴマダラとなっていましたが正しくはアカボシゴマダラでした。アドバイスを頂き、茨城県自然博物館に目撃を報告しました。
追記:アカホシゴマダラとなっていましたが正しくはアカボシゴマダラでした。アドバイスを頂き、茨城県自然博物館に目撃を報告しました。
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