2014年11月29日土曜日

11/8の宝篋山

11/8、所属する野生動物研究会の宝篋山散策に同行した。


 今回の目的は冬の昆虫採集の風物詩、オサ掘りの場所を探すためのものだった。オサ掘りとは、その名の通りオサムシを掘り当てる昆虫採集のことだ。ほとんど虫の動きがない冬季において、オサホリは昆虫採集家の醍醐味らしい。

 場所としては、少し切り立った露頭が良い。ちなみに去年のオサ掘りでは元会長が冬眠中のオオスズメバチの女王を掘り当てたりしている。

冬眠中だったオオスズメバチの女王。この後どうなったかは定かではない(おそらく標本になった)

なお、この下には一部グロテクスな画像があるので注意していただきたい。

今回は宝篋山の中でも人の少ない小田城コースを行った。まるで中国の景勝地のような風景だが、ここはかつて石切り場があったところだ。宝篋山にはかつての石切り場跡地が四カ所ほどある。

かなりグロテクスな画像だが、ケバエの幼虫の集団越冬。今まで見たこともなかったが、今回だけで3箇所も見つけた。日当たりの良い落ち葉の下などで集団でいて、少し触るとウネウネと動き出す。

yg君が発見したオサムシ。どうやら掘るときにスコップが首を落としてしまったようで、だいぶショックを受けていた。

冬眠していたクマバチと思われるハチ。

イノシシの足跡。獣道やヌタ場、堀跡などイノシシの痕跡は多く見られた。


おそらく猛禽などに鳥が捕食された跡。尾羽根から察するにコゲラだと思われる。



2014年11月27日木曜日

秋の宝篋山

とっても久々な投稿。

面倒臭がらずに書いていきたいと思うけど、なかなか時間を取れない日々。

今回は10月に行った宝篋山について書いてみる。
だいぶ前なので風景はだいぶ違ってしまっているが、今は紅葉が見頃となっている。

麓の田んぼ付近にあったイノシシの足あと。今後いやというほどイノシシの痕跡に出会うこととなる。
某団体が作った池は錦鯉ごと土砂に飲まれて埋まってしまったようだ。
メジロ。宝篋山の尾根筋を歩くと小鳥の群れによく出会う。


一方で厄介者のソウシチョウ。見た目は綺麗でも数が多いとただのうるさい鳥だ。

地元の人にはチョウセンウグイスと呼ばれているようだ。特定外来生物だが、麓から山頂まで多く生息している。
山頂の風景。筑波山がよく見えた。


写真には撮れなかったものも、コゲラやアカゲラもしくはヤマゲラなど、キツツキの仲間にも多く出会った。これほどキツツキを見かけるのは個人的に初めてだったが、単純に興味が向いてわかるようになったのだろうか。

これからはなんとかファインダーに収められるようにも努力したい。



久々の更新

前回から一体どれほど時間が立ってしまったのか…

全く更新していなかったものの、何もなかったわけではない。この間は富士山に二回登ったり、八ヶ岳に三回行ったり、奄美大島に行ったり、イノシシの皮をさばいたり、山へ芝刈りへ行ったりと色々としていた。

今後時間ができればひとつひとつ記事にしていきたいと思う。

2014年8月29日金曜日

つくばのセミ事情

 院試が終わりさあ夏だ、と思ったらこの頃はもう完全に秋な今日このごろ。

 涼しさも相まって、牛久に行くとここ一週間は朝でも昼でも夕方でもヒグラシが鳴いている状態だ。時期的には、もうそろそろまばらになってくるはずなのだが、未だに蝉時雨がすさまじい。

 さて、今回はセミについて、特につくば周辺の自分が見聞きしたセミ事情について書いてみようと思う。当然ながら、なにかしらデータをとっているわけではなく、客観的なデータにはなりえないのであしからず。

 ただ、セミというのはいつから鳴き声が聞こえたか、どのあたりで何が鳴いたかという見聞きのデータが重要なのだと思われる。そんな蓄積に少しでも役立てればと思う。

 まずは、今年の種類別のセミの鳴き始めについて。

  • ニイニイゼミ:6/29
  • ヒグラシ:7/2
  • アブラゼミ:7/20
  • ミンミンゼミ:7/20
  • ツクツクボウシ:7/28(Nさん)⇒8/1(自分)

いずれもつくば周辺のものだ。感覚的に、今年は初聴きが少し早かった気がする。

 一番手に来るのはニイニイゼミで、これは毎年の梅雨が開けた風物詩だ。二番手が、世間一般に夏の終わりの虫と思われているヒグラシ、最後に出てくるのがツクツクボウシだ。実際にはヒグラシの発生は7月上旬で、夏の終わりにはかなり減っていると言われている。朝夕の涼しい時間帯、または夕立の後に鳴く印象が秋と結び付けられたのだろうか。

 上に書いたように、ここ最近の涼しさで昼間でもヒグラシばかりの鳴き声を聴く。ヒグラシは多少暗く湿った針葉樹林を好むので、筑波大学周辺では一ノ矢学生宿舎や天久保3丁目~桜の反町の森公園あたりでよく聴くことができる。また、牛久の牛久自然観察の森は大半がよく手入れされたスギ林なのでかなりの数のヒグラシが生息している。

 もっとも、本来はヒグラシの発生ピークは過ぎているので、最近聴けるものは少ないのではないかと思っていたが、ここ数日の牛久での大合唱を聴く限り考えを改めなければならなそうだ。

 さて、実はここにあげていないセミでもつくばで聴くことができるかもしれないセミがいる。

 ひとつはハルゼミ、エゾゼミの仲間だ。ハルゼミなのかエゾハルゼミなのか定かではないが、筑波山の上の方、あるいは宝篋山でも6月から7月の早い時期にかけてジーーーーという声を聴くことができる。筑波山には珍しいヒメハルゼミもいるようだ。

 もうひとつがクマゼミだ。西日本ではポプラーなセミだが、伊豆より東の東日本は生息域ではない。これは終齢幼虫がある一定の寒さに耐えられないからだと言われている。ゆえに、温暖化の影響で徐々に生息域を北に伸ばしている。

 しかし、つくば周辺ではこのクマゼミの鳴き声を聴けることがある。昨年はつくばセンター付近のケヤキの木で、2日連続クマゼミの鳴き声を聴いた(いずれも朝早く)。今年は今のところ聴いていないが、その時牛久自然観察の森の園長に聴いた所「どうやら土浦あたりにクマゼミを放している人がいるらしい」ということであった。

 そして今年、twitter上でこんな情報がまわってきた。

「 くまぜみマニア氏の返事によれば、クマゼミの移動を始めて4年、毎年400~1000 匹を静岡県清水市、神奈川県三浦市から茨城県土浦市、東京都練馬区へ放しているそうで、 今後も清水市市民及び数々の協力者の協力を得、土浦市、練馬区、江戸川区へ放すそうで ある。」


…裏がとれたので噂は間違いなかったということであろうが、このような人がいるということに驚きである。一般常識として、その地に生息しない生き物を人為的に放すなど論外である。

 人間の身勝手な放流が自然に与えてきた影響は凄まじく大きい。そんな歴史を全く知らないのだろうか。名前から見て、本人はクマゼミが好きなのだろう。だからといって、自然界に勝手に放流して良い道理はない。

そもそもクマゼミは西日本では騒音の問題や、電線への卵産み付けなどかなり害虫のような扱いを受けていると聴いた。世の中にはよくわからないことをする人がいるものである。

2014年8月4日月曜日

宝篋山採集

 宝篋山にて水生生物の採集をしたのですが、それらの写真をGoogle大先生がほぼ自動に動画のようなものを作成してくれました。

 「ストーリー」という機能なのですが、こういう使い方もできるんですね。

筑波山登山 ~車は偉大~

 今回も、高校時代の友人が筑波山を登りたいということなので案内をした。

 気がつけば、月に一回筑波山を登っている。スパンとしては季節のうつりかわりも見れて、嫌になるほど高頻度というわけでもないのでちょうどいいかもしれない。

 往復は友人の車にのせてもらった。今まで自転車で行っていたが、やっぱり車は偉大だった。筑波山神社周辺にはあまり止めたくなかったので、つくば道の麓の市営駐車場に車を停める。

つくば道。かつての参拝道で、等高線に垂直に登るため自転車はおろか車も少々きつい傾斜。

最後には階段が復元されている。横は臨時開業することもある旧筑波郵便局。

 この日は非常に蒸し暑く、日差しも強かった。つくば道には当然木陰はなく、筑波山神社に着くまでで既に汗だくになってしまった。筑波山神社から先は森の中の登山道なので、楽になるかと思いきや湿度が凄まじくダウン。そこそこの頻度でおいてあるベンチに毎回腰をかける結果となった。二人して「チェックポイント!!」というほどである。

 夏の日の低山は、たとえ朝早くともかなり厳しいかもしれない。8月にも行きたいが、よく計画しておいたほうが良さそうだ。

 
御幸ヶ原では旧暦の七夕祭入りが開かれていた。


 いつもどおり女体山の山頂を目指す。そういえば、筑波山神社コースから登るのは数カ月ぶりだった。途中、男女川のところでアサギマダラが飛んでいた。筑波山は飛来地として有名らしいが、初めて見た。

 その後、女体山頂付近に差し掛かると、笹の一斉枯死が見られた。

女体山頂付近の笹。前回花が咲いたと報告したが、やはり花が咲いて枯れたようだ。笹は地下茎でかなりの範囲に広がっており、一斉枯死する。

 笹の一斉枯死は、花が咲いたあとなので数十年とも数百年に一度だとも言われている。この機会に、それまで笹との競争に負けていた稚樹が育ち、世代の交代が起きやすくなる。特にこれはブナ林でよく起きることで、近年衰退しているという筑波山のブナ林もこれで持ち直してくれるのだろうか。ただし、逆に鼠が笹の実を食べ爆発的に増え、それが木の実も食べ尽くしてしまうという事例もあるようだ。

 来年度にどうなっているかに注目していきたいと思う。

 さて、女体山の山頂では先月に引き続き多くの蝶が舞っていた。今回はアカボシゴマダラを見ることはなかった。しかし、ナガサキアゲハの夏型が飛んでいた。これも、元々は南国の蝶だ。しかし、温暖化の影響か年々分布域が北上しており、つくばでの目撃例もあるのでそれほど珍しいことではないだろう。オニヤンマなど、トンボ類も多く現れるようになった。
タテハチョウ科。残念ながら、自分にはこの種類の蝶は苦手でわからない。

キアゲハ。

 帰りはつつじヶ丘まで下り、そこから筑波山神社へと下る道を通った。
 平日とはいえ、やはり暑さのせいかいつもよりかは人が少なく感じた。これからは特に熱中症に気をつけていこうと思う。



2014年7月26日土曜日

野生動物との出会いは突然に

 ブログに書きたいネタはたくさんあったが、しばらく書く暇がなかった。

 今回は、2週間前に行った宝篋山での観察会について書いてみようと思う。

 約2週間前、同期のH君と一緒に宝篋山の夜間観察会を開催した。開催したといっても、二人である。同期の間で「里山」など、自然関係の勉強会を開いてはどうかという話があって、宝篋山での夜間フィールドワークを提案したのだが、予定があったのがH君だけだった。

 メインとなるべくホタルはもう時期としては遅いので、決行することにした。

 ただし、今回はホタルだけではなく、前回見つけたクヌギの樹液の出ているところでカブトムシやクワガタを探したり、夜動きの鈍い魚や水生昆虫を観察してみたり、タヌキやイノシシの足跡を探してみることにした。

 H君は今後の研究のためにももっとフィールドワークの経験を積みたいとの事だった。自分としても、やはり本を読むだけではフィールドでの”勘”は身につかないとつくづく感じていたので、本当にフィールドワークは重要だと思う。

 さて、今回の夜間観察会の成果は以下のとおりである。
カブトムシの残骸。
残念ながら、生きた甲虫類はあまり見れなかった。このカブトはうかつにも昼間に飛んでカラスか何かに食べられてしまったのだろう。

田んぼにいたコオイムシ。
コオイムシの生体を宝篋山で確認するのは初めてだった。他にも田んぼにはヒメガムシ・ヒメゲンゴロウ・シマゲンゴロウなどがいた。

マムシ
御存知の通り本州では最凶の毒を持つ蛇である。通り道の足元を照らしたらいたのだから恐ろしい。

とぐろをまいて寝ていたようだ。まだ若いようで小さかった。この場所は山と田の境界なのだが、二年前にも同じ場所でマムシに遭遇したことがある。


 夜間だったので、写真はあまり多く撮れなかった。ホタルの方は、もう時期が遅いということもあり、また当日は非常に風が強かったということもあり、前回よりかは見れなかった(それでも10匹以上は見れたが)。

 用水路では、浅いところにドジョウとアメリカザリガニが大量にいた。魚は本当に夜間は動きが鈍く、手でも掴めそうな勢いだった。また、大きいスジエビの目がライトに反射して褐色に光るのが少々不気味だった。

 その後、田んぼで足跡探しをした所、足跡どころか本物のタヌキが正面から歩いてきていて、エンカウントしてしまった。お互いが正面を向き合った形で出会い、タヌキはすぐに逃げ出したがH君もバッチリと見ることが出来た。

 まさか本物を見ることができるとは思ってもいなかったので嬉しかった。

 やはり、フィールドに出るといいことがある。

2014年7月9日水曜日

筑波山は外来種天国? ソウシチョウとアカボシゴマダラ

約一ヶ月前の筑波山登山の出来事だが、記事にしてみようと思う。

筑波山に外来鳥であるソウシチョウが多く生息していることは、既に何回か記事に書いている。ソウシチョウは特定外来生物にも指定されており、日本の侵略的外来種ワースト100にも入っている。元々は中国原産の鳥で、姿形や鳴き声が美しいことからペットとして飼われ、逃げ出した個体や放鳥された個体が筑波山に住み着いたようだ。

2014.5.14 女体山の尾根付近にて

2014.6.4 女体山頂付近にて
なぜ筑波山で定着したかわからないが、少なくとも筑波山のつつじヶ丘ー女体山コースでは登ってその鳴き声を聴かない時はないほど増えている。今回は山頂付近で群れでいるところを目撃したほどで、ウグイスなどの小鳥のニッチを脅かすのではないか、という侵略的外来種指定の理由もうなずける。宝篋山でもその生息は確認することが出来た。

 一方で、その姿形や鳴き声の美しさから登山客には人気である。元々籠の鳥であったためか、警戒心が薄く登山道沿いにも度々姿を表し登山客の足を止めている。その人達がこの鳥を外来種であることを認識しているかどうかは分からないが、個人的に、この鳥が人の手によって放たれたものと知ってしまうとその美しさにも興ざめである。「万葉の時代の控えめな鳥の鳴き声とはかけ離れている」という人もいた。


 さらにもう一種紹介したい外来種がいる。それは、女体山山頂でキアゲハが乱舞している中に突然現れた。

2014.6.14 女体山頂
最初は、アサギマダラか?と思った。筑波山にはアサギマダラの渡りの中継地があり、よく姿を見かけると聞いていたからだ。しかし、レンズをズームに変えてみてどうも違うことに気づく。アサギマダラはオレンジの縁のはずだが、この蝶は赤色で、しかも一部分でしかない。マダラチョウの仲間でこのような色合いの蝶は見たことがなく、家に帰って図鑑で見ても定かではない。

 そこで、やどけんのメンバーや牛久自然観察の森にて質問してみたところ、この蝶はアカボシゴマダラであるということがわかった。

同日。アカボシゴマダラ(夏型)
タテハチョウ科に属し、日本では南西諸島を中心に見られる。近年関東にて大陸型の亜種の分布が確認されている。

同日。アカボシゴマダラ(夏型)
アカボシゴマダラは、本来日本においては南西諸島にしか生息しない種である。しかし、どうやら愛蝶家によるゲリラ放蝶によって、大陸型の亜種が関東を中心に分布を拡大しているようだ。愛蝶家にとっては、この外来種が在来種に与える影響よりも、アカボシゴマダラの美しさの方が大事なようである。

 確かに、この蝶は美しい。自分でも見ていてほれぼれとする美しさだ。しかし、そのような理由で本来生息しない生物を放したことによる影響について、その人はこれまでの歴史を振り返ったことがないのだろうか。人為的に持ち込まれた種によってどれほど生物多様性が失われてきたことだろう。このアカボシゴマダラも、植樹であるエノキを巡って、同じくエノキを植樹とするオオムラサキやゴマダラチョウと競合するものと考えられる。1995年に初めて埼玉県で確認されて以来、現在に至るまで関東全域に生息域を広めているところを見ると、その繁殖力の強さも伺える。


 ソウシチョウとアカボシゴマダラについて共通して言えることは、どちらも「美しい」から放されたということだ。そして、美しいゆえにこれが外来種だから駆除すべき、あるいは広めるべきではないと言っても、世間ではあまり受け入れられないという問題もある。これらの生き物は見る人を楽しませているのだからいいではないか、ということである。似たような問題は、京都においてマスコットキャラクターと化したヌートリアや、北海道にて釣り客のためにニジマスを放流する団体など、全国に見ることができる。

 人間が見るからには、その利用や経済的な側面、見た目から生き物がより好みされるのは仕方ないことだろう。誰だってゴキブリを保護しようだなど思わない。しかし、それを「自然」の領域で使ってしまってはそれを「自然」といえるのだろうか。

 筑波山は全域が水郷筑波国定公園に指定されている。そして、これらの生き物が見られたのは原生的な自然を保護すべく設定されたはずの「特別保護地区」である。特別保護地区では一切の動植物の移動・採取が禁止されている。ある意味、この法律がソウシチョウとアカボシゴマダラの駆除を阻んでいるというのも皮肉なものである。

 他方で、「外来種」と一方的に決めつけて攻撃する風潮もどうだろうかという意見もある。イネや殆どの野菜、家畜は元を正せば外来種であり、人為的でなくとも広がる外来種もいる。そのあたりと上手く付き合って自然と人間の領域を考えることが今後求められていくのだろう。


 なお、参考資料として610氏から以下の資料を紹介していただいた。
茨城県坂東市におけるアカボシゴマダラ(チョウ目:タテハチョウ科) の羽化の記録
茨城県におけるアカボシゴマダラ (チョウ目: タテハチョウ科) の記録

追記:アカホシゴマダラとなっていましたが正しくはアカボシゴマダラでした。アドバイスを頂き、茨城県自然博物館に目撃を報告しました。

2014年6月24日火曜日

宝篋山散策 ~棚田から山頂まで~

 先日二回に渡って宝篋山に行ってきた。今回は、その時のことをまとめて書いていこうと思う。

 宝篋山については先日航空写真で時代を追ってみたところ、山全体でかなり植生の変移があることがわかった。具体的には、アカマツ林から針葉樹、広葉樹林に変わっていたり、皆伐があるなどだった。それを現地に行って確認してこようと思ったのと、ただ単に自然観察をしようと思って行ってみた。

 見た目でずっと変わってきていないように見えて、実際にはこの60年で大規模な変化を繰り返してきたようだ。一旦禿山になっていたのに数十年でわからないほど回復するとは、自然の力というのはすごいものである。

1975年の宝篋山航空写真。今と全く植生が違うことがここからもわかる。
国土地理院空中写真閲覧サービスより。

・麓 

 麓の棚田は、かつて皇室献上米ともなった小田米の産地だ。中央の高台は畑や放棄地になってしまっているが、沢筋は今でも立派な田んぼがある。一部では減農薬栽培をしているようで、今では珍しい水生昆虫や水草を見ることができる。
ホタルブクロ
人工的に植えられたのか、判別はつかなかった。個人的に好きな花。
ウラナミアカシジミ
そこそこレアとの話が
水だけを貯めたビオトープのようなところで発見。
これはシマゲンゴロウで、中型のゲンゴロウだ。小型のものはともかく、中型以上は生息地を選ぶ。
準絶滅危惧(NT)(環境省レッドリスト)
同じビオトープの水草。中央の黄緑がキクモ、少し濃い緑がシャジクモ。他に多く生えているものは分からなかった。

麓から少し行ったところは林のようだが、これは湿地の先駆種のハンノキだ。
上記の写真で棚田だったところが放棄されてこうなったようだ。


色々と問題になっていた麓の人工池に放されたニシキゴイが打ち上がって死んでいた。コイが飛び跳ねて死ぬことはよくあるらしいが、、池から垂直に3メートルほど高いところで死んでいたのが不思議だ。ひとのイタズラか、動物の仕業かもしれない。

・登山

 実は、宝篋山の山頂まで行ったことは今までなかった。今回はキノコの研究をしている同級生と登れたため、途中に生えているキノコの話や、キノコと植物の関係の話を聞くことが出来た。

 見えないところで働いている自然というのは、見えないけれどもとても大きな働きをしている。キノコの植物に与える影響というのは単なる腐朽だけではなく、栄養分を分け合う共生関係もあるらしい。そんな働きにも目を向けられるようにならなければいけないと思った。

 また、山頂近くではソウシチョウの群れを見ることが出来た。


筑波山女体山頂付近のソウシチョウ
6/14撮影

 ソウシチョウは、姿も鳴き声も大変美しい鳥である。筑波山では登山道周辺にもよく出てくるため、その鳴き声に耳を傾ける登山客も多く見かける。しかし、ソウシチョウは特定外来生物に指定されている。元々ペット用に輸入されていたのが、放されて野生化している。ウグイスなどのニッチを奪うおそれがあるとのことで、特定外来生物に指定されたようだ。

 正直、ブラックバスのように在来種を捕食するような生物の特定外来生物指定は納得できるのだが、ソウシチョウには疑問を感じていた。しかし、筑波山での現状や、宝篋山にまで広がっている繁殖力の強さを目の当たりにすると納得である。

 このように人為によって持ち込まれた生き物は、たとえ美しくても生息が広がらないように努力しなければならないのだろう。


ヒトクチタケ
枯れた赤松につくそうだ。この赤松は大木だった。宝篋山は元々赤松だらけだったそうだが、今は尾根筋にわずかに残るのみである。

オオホウライダケ
沢沿いの登山道で多く見られた。
 
イノシシの足跡。宝篋山に限らず、筑波山全域でイノシシの被害は広がっている。キノコも食べるため、セシウムが濃縮されてしまっているのも問題となっている。 
野生化したチャノキ。元々栽培していたものが意外と広範囲に広がっている。もちろん、これからも美味しいお茶が作れるようだ。

岩場の苔も美しい。

宝篋山全体は花崗岩で出来ていて、このように美しい渓谷を見ることもできる。

沢を抜けた中腹からはコナラ中心の広葉樹林が広がる。
樹齢を重ねたヤブツバキも見ることが出来た。

山頂のホタルブクロ。これは人工的に植えられたか?

山頂からの眺望。この日は靄がかかっていた。

・夜

 実は、宝篋山はホタルのスポットだ。水生昆虫が多く生息しているところは、同時にカワニナも生息する。そのカワニナを餌とするホタルが多く見られる。ホタルは本来(ここ数百年の歴史でという意味だが)二次的自然に多く見られる。カワニナは砂地の、少し汚れた有機物の多い環境に生息する。そんな環境は本来洪水の後の河原などに成立するものだが、田んぼと用水路というのはその環境を満たす絶好の生息場所だ。用水路は定期的に手入れされ泥が除かれる。また、集落や田から流れる有機物はその餌となる。単に清やかな清流にはホタルもカワニナも住みづらいのだ。
こんな環境が、特にヘイケボタルなどにとって住みやすい。
減農薬・非暗渠、コンクリート化など
4/24撮影
 
 ある程度の人為が生物多様性を増すという例で、ホタルはその最たる例だろう。逆に、この理論が自然に手を加えることに対して暴走を起こすこともある。今の長らく放棄された耕作放棄地や里山は「荒れた」状態だから、手を加えてもとに戻すべきだというものだ。

 これは、確かに大事なことだ。「荒れた」自然は見た目も悪いし、人が利用しづらい。だからといってその放置されてできた環境は悪いものなのだろうか?それを含めて自然であり、「荒れた」というのは主観だ。人が手を加えて住みやすいホタルのような生き物もいれば、逆に住みづらい生き物もいる。そんな生き物たちのこともよく考えることが真の自然保護・保全だろう。

 というのも、この宝篋山では近年大きな意見の衝突があるからだ。ボランティアの方々は多くの人に利用してもらえるように、山を整備して「里山」にしようとしている。一方で、今ある自然に対してそれを壊してしまうのはそこに住む生き物たちのことを考えていないという意見だ。

 そして、例年多くのホタルが生息していた場所もその対象となって、大きく環境が変わってしまったのだ。今まで藪があり、沢があったところが焼き払われ、せき止められ、あろうことかコイが放された。

 あまり知られていないが、コイは外来種だ。しかも、大食漢でその場の水草や貝類を食べ尽くしてしまい、環境に大きな影響を与える。元からいる場所ならともかく、綺麗だからという安易な理由で放しては絶対にいけない。

 どこまで人為を許すのか、というのは非常に難しい問題だ。見た目が綺麗だから、と山にコスモスや園芸品種のツツジを植えるのは正しいのだろうか。自然に手を加える時は、その影響を熟考してもしきれないほどでなければならないだろう。これに対してはいろいろな意見があるだろうから、自分にとって長く研究していきたいテーマだと考えている。

 いずれにせよ、この美しい蛍の光がこれからも残っていってほしいものだ。
ヘリケボタル

ヘイケボタルとゲンジボタル、オバボタルがみられる。

 

 

2014年6月13日金曜日

「狩猟はスポーツ」なのか?



本日の「自然地域計画」の授業で、
『森林環境に対する住民意識の国際比較に関する研究森林環境に対する住民意識の国際比較に関する研究』(1981年)
という調査書について話があった。

 この調査は世界の人々の森林観をアンケートによって統計的に調査したもだ。たとえば、
「あなたは森に入って何か神聖なものを感じたことがありますか?」
「森林に手を加えることについて、森を守るうえで必要な行為だと思いますか?」
という質問などがされる。これに加えて、とある森林の写真二枚を比べて、どちらが好ましいか、という質問をされる。

 結果として、人間は表面上「生物多様性の高い、自然に近い森林」を好むと思われがちだが、実際には「とある種で構成された、一見してすっきりとしていて見た目の美しい人為の入った自然」を好むとわかる。

 内容的にはとても興味深いが、今回は結果の分析を詳しく読む時間もなかったので詳細は省かせて頂く。ただ、今回気になったのはアンケートの一項目にあった
「狩猟はスポーツとして認められるのか?」
という項目だ。

 狩猟=スポーツ、この感覚は欧米的な価値観をとても感じる。実際調査結果を見ると、この項目に関しては世界各地で質問の意図が誤解を生むという指摘があったようだった。自分としても、生き物の命を奪う狩猟をスポーツとするのか疑問を感じてしまう。

 ただし、現状の日本においては狩猟で生計を立てている人はほとんどいない。とすれば、それは趣味の一環で「スポーツ」とされても仕方のないことなのではなかろうか。

 日本各地で鳥獣害が深刻になっている中、狩猟免許の所持者はますます少ない。つい先日、改正狩猟狩猟鳥獣法が可決され、日本の野生動物対策は保護から管理へと大きくシフトした。
環境省 鳥獣の保護及び狩猟の適正化に関する法律の一部を改正する法律案 の閣議決定について (お知らせ)


 そして巷で「狩りガール」が話題となったり、狩猟生活を描いた「山賊ダイアリー」がヒットするなど、世間の狩猟に対する目は比較的明るい方向に向かってきている。

 しかし、そうすると大きく問題になってくるのが「動物の命を奪う」という行為だ。狩猟の大義名分としては「適正な野生動物管理」であるが、狩猟をスポーツと認めてしまえばそれは人間の楽しみのために無為に生き物を殺していることとなる。

 やはり最近マスコミに狩猟が取り上げられるにしたがって、そのような意見を言う動物愛護団体が増えているような気がする。

 無論、自分としては狩猟は人間と自然の適正な関係を築くために重要だと思う。家畜だから肉としてのみ考えていいわけではないし、野生動物とも適切な関わり合いを持っていなければ人間は大事なことを忘れてしまうと思う(だからといってとって食うことが良いかはかなり議論が必要だろう)

 以前から農に関わる者として、食料生産、特に家畜の扱いについて無知のままではいてはいけないと思っていた。最近は、さらに踏み込んで口だけでいうものではなく、自ら実践して考えようと思い、狩猟免許の資格を取ろうとも考えている。

 だからこそ、「狩猟はスポーツ」ではなく、生き物の命を奪って頂いているものだということを胸に抱いて野生動物と人間の関係を考えていかなければ、と思う。

2014年6月12日木曜日

筑波山キャンプ

前回の更新からかなり間が開いてしまった。
本当に、日記感覚でつけていくように努力できるようにしなければ…

今回書くことも、実は少し前の出来事になってしまう。
6/8~9にやどけん(野生動物研究会)で、筑波山キャンプに行ってきた。このキャンプはやどけんの恒例行事で、毎年この時期に行っている(そして大抵の場合雨である)

 キャンプ場は筑波高原キャンプ場というところだ。場所としては筑波山の北側、裏筑波と言われるところである。水郷筑波国定公園の特別地域で、このキャンプ場周辺では採集などに関して特に規定はない。しかし、キャンプ場自体は作られてからかなりたっていてなかなか古い。筑波山では施設の老朽化が各地で問題になっていて、国定公園全体の問題となってしまっている。もっとも、やどけん部員に対してはそんな古さなどお構いないしで、むしろ虫が出れば歓迎するほどである。


例年雨が多いとはいえ、少しは晴れ間が覗いてくれるのが常であった。2年前には、二日目以降は晴れて見事な雲海を見せてくれたものである。筑波山は、関東地方にポッカリと標高900m近くの山があるために、氷河期の生き残りを含めた固有種の宝庫となっている。キャンプではそれらの生き物を観察することが主な目標だ。
2012年に見られた雲海。標高1000mも行かないところで
雲の上に立つとは思ってもいなかった。

  キャンプ場到達直前、林道脇でイノシシを見かける。野生のイノシシを見かけるのは初めてで、天候は最悪とはいえこれからに期待がかかった。もっとも、筑波山全体としては、イノシシはほぼ年間を通じて駆除期間となっているほど増えてしまっている。夜行性なのでめったにお目にかかれないものであることには代わりはないのだが。

 ちなみに、キャンプ場周辺は標高的には冷帯の植生も混じってくる場所である。カエデやシデ等がある一方、コナラなども一部には生えている。しかし、筑波山の北側は造林の盛んなところで、比較的よく手入れされたヒノキの人工林も混じっている。そのため、様々な動物・昆虫に出会うことが期待できる場所だ。

 しかし、それは天候が良ければの話だった。結果としては、二日間を通じて大雨で、まともな採集はできなかった。初のやどけんの大きなイベントとなるはずだった一年生たちには非常に残念な結果となってしまった。

 夜のBBQでさえ、炭が湿気っているほど常に雲の中という有り様だった。ライトトラップもやったが、大型の甲虫は来てくれなかった。沢には期待したが、雨と増水ですこしだけしか行動出来なかった。それでも、一年生たちは固有種のツクバハコネサンショウウオやサワガニを見つけていて、将来有望である。

ギンリョウソウ。腐生植物とよばれ、キノコのようにして
栄養を得ているが、れっきとした植物である

ツクバハコネサンショウウオ。昨年ほどに新種として発見された。

大量のサワガニ。実は結構美味しい。

サイレント・筑波

 やどけんは既にOBとなってしまったが、新入生たちもたくさん入り活気づいて何よりだった。現役生のじゃまにならないよう、これからも活動に参加していきたい。